高広は……まだ来ていないようで、姿が見えなかった。


クラスメイトの行動も、「昨日」までのものじゃない。


健司は別として、他の3人は友達とあいさつを交わしたり、雑談をしたり。


「カラダ探し」を頼まれる前と何も変わらない、自然な光景が広がっている。


「やっと……元の生活に戻れたんだ」


そう言葉にしたら、抑えていた涙があふれ落ちた。


まだいろいろと疑問は残っているけど、今はどうでも良い。


考える事は後でいくらでもできるから。


そうして、入り口に立っていると、自分の席に荷物を置いた留美子がこちらに向かって歩いてきた。


「おはよう、留美子」


流れる涙を拭い、笑顔であいさつをする私を見て、首を傾げる留美子。


「え?ああ、おはよう。てか、あんた、なんで朝っぱらから泣いてんの?」


「へへ……うれしくてさ。高広はまだ来てないの?」


「は? 高広? あいつがこんな時間に来るわけないじゃん。今日もまた遅刻に決まってるでしょ」


「昨日」では、いつも早くに迎えにきてくれたのに。


あ、もしかして、私が学校で目が覚めた事を知らなくて、家で待ってるのかもしれない。