「え……」


目に飛び込んで来た光景を私はどう理解すればいいのか……。


そこには、友達と談笑しながら歩いている、留美子の姿があったのだ。


生徒玄関の前の廊下を、笑いながら通りすぎていく留美子は、私に気づいていない様子だった。


何がなんだか、私の頭では理解できない。


でも、理解なんてできなくても良い。


留美子が生きて目の前を歩いていたという事がうれしくて、私は長椅子から腰を上げた。


留美子がいるのなら、他の皆もいるかもしれない。


理恵も、翔太も、健司も、そして、高広だっているに違いない。


「嘘だったんだ、消去だなんて」


皆がいる……それがうれしくてたまらない。


しばらく立ち尽くしていたけど、胸に湧き上がる感情を抑え切れず、泣き出しそうになりながら、私は留美子の後を追って教室へと駆け出した。


話したい事はいっぱいあるけど、まずは皆の顔を見て安心したい。


高広に逢いたい。


ホールを出た私は、西棟の二階にある教室に向かい、開いたドアの前までやってきた。


教室の中に入り、室内を見渡すと……今、私より少し先に教室に入った留美子、自分の席で予習でもしている様子の翔太、友達と話をしている理恵、椅子に座って目を閉じている健司。