まるで、遥の頭の中からはい出てくるようにそれが姿を現そうとしている。


遥と同じような黒く長い髪が、バサリと垂れ下がったのは、その人物が遥の中から出ようと、頭を出した時だった。


その頭が出た後、遥の頭から飛び出し、四本の手足で床に着地した人物を私は知っている。


黒く長い髪、白い手足、そして……赤い服。


旧校舎の職員室のデスクの下で、私を見ていた時と同じような体勢で、その顔が徐々に上げられる。


遥が「カラダ探し」を頼んできたのに、自分のカラダを探している私達の邪魔をするなんて、おかしいと思った。



「お、小野山……美紀？」



「赤い人」と同じ顔で私を見上げる少女は、ニヤッと笑みを浮かべて、ゆっくりと立ち上がる。


それを見ながら私は、頭の中で必死にこの状況を整理しようとした。


だけど、次から次へと驚く事が目の前で起こって、私の頭では処理しきれない。



「もういいよ、遥お姉ちゃん。元に戻っても」



混乱する私をよそに、美紀とおぼしき少女が、遥にそう声をかけた。


すると、その言葉に従って遥が歩き出し、棺桶に横たわる自分の身体の隣に立ったのだ。


そして、それに重なるように棺桶の中に入る遥。


「次は、お姉ちゃんが美紀ちゃん達と遊んでくれるの？」