目の前の、いるはずのない人物を見た私は、思わず声を上げた。


黒く長い髪に、何度も見た、制服に身を包んだその肢体。


いや、何度も見たなんてものじゃない。


今の今まで、そこで私が見ていたのに。








「どういう事か説明してよ……遥!!」






何がなんだか、さっぱりわからない。


私達は遥のカラダを探していたのに、どうして遥が目の前にいるの?


それに、私が見た放送室の中の人は遥じゃない。


あの目と遥の目を見間違えるはずがないし、何より遥の前髪はあんなに長くはない。


振り返って、棺桶を確認しても遥が横たわったまま、そこにいる。


遥がふたり……私の頭では、この状況を理解する事ができない。


恨みも、怒りも、すべて吹き飛んでしまった。


私の問いにも答えてくれない遥を前に、どうしていいかがわからない。


そんな風に、オロオロとうろたえている私の目の前で、何を考えてそうしているのか、ゆっくりと背中を向ける遥。


そして……。







その長い後ろ髪の中から小さな手が現れ、髪を左右に分けて……そこから、あの目がこちらをのぞいたのだ。


私はようやく理解した。