もう、こうなったら高広には勝てないだろう。


いくら翔太が頭が良いからと言っても、自分の非を攻められたら、反論なんてできるはずがない。


イエスかノーか、どちらかしかない選択肢ですら、イエスしか認めない。


高広の言葉には、そう言った脅しも含まれていた。


「遥を殺して……もしも『明日』が来たらどうするんだよ! 俺は人殺しになるだろ!」


「もう人殺しみたいなもんだろ! あぁ!? 健司も殺した、理恵も殺した、なら……遥も殺せるだろ!!」


「それは……『カラダ探し』の話だろ」


カラダ探しの中でなら、人を殺してもいい。


そんな事を思っている翔太なんてどうなってもいいと、私はそう思うようになっていた。




高広に遥を殺す事を強要された翔太は、授業中もガタガタと震えているのがわかった。


あの日、遥に「カラダ探し」を頼まれさえしなければ、翔太が孤立する事はなかったのかもしれない。


繰り返される「昨日」の中では、他の生徒達が、プログラムされた通りに動くロボットのように、同じ行動を取るだけ。


話しかければ会話はしてくれるし、高広が怒鳴れば、その方を向くけれど。


それでも、自分の意思を持っているのは、私達だけのような不思議な感覚に包まれる。