私は、手にした遥の頭部を、棺桶の空洞になっている部分に押し込んで……。


八つに分けられた、遥のカラダのすべてが揃ったのだ。


遥のカラダが全部そろい、首と胴の間に挟まっていた長い髪の毛が、スルリとすり抜けるように、首の横に分けられた。


そして、首の切断面が徐々につながっていく。


その奇妙な光景を、神秘的に感じた私は、「赤い人」の事など忘れて見入ってしまっていた。


カラダを棺桶に納めた時点で、私の役目は終わったのだから、このまま死んでも良い。


八代先生が言っていた事が本当なら、死んでも明日が訪れるのだから。


そう思い「赤い人」の方に顔を向けると……。


私を襲う様子もなく、遥の身体をジッと見つめて立ち尽くす「赤い人」の姿がそこにはあったのだ。


それは、私にとっては異様そのもので、襲いかかってこない事が不気味に思えた。


これから何が起こるのだろう?


もしも、何も起こらないのなら、私はどうすればいいのか。


試しに振り返ってみても、目の前に「赤い人」が現れない。


変わらず遥を見つめたままで、微動だにしていないのだ。


何をどうすればいいかわからず、棺桶の周りに置かれた長椅子に、私は腰かけた。


棺桶に納められたままの遥、長椅子に腰かけた私、そして「赤い人」。