皆が命懸けで運んでくれたこのカラダを、私が棺桶に納めないとすべてが無駄になってしまう。


「失敗したら、また明日」なんて、そんな事は誰も望んでいないし、健司だってどうなるかわからないから。


もう、今やらなければ次はないという思いが、私の中にはあった。


落下する遥の頭部。


その異様な物体を受け止めるために、できる限り手を伸ばしたけど……。


それは叶わず、遥の頭は、ホールに設置されている自販機の角に落ちて、軌道を大きく変化させる。


遥の頭は走っていた私の足元に転がり、思わずそれを蹴飛ばしそうになったけれど、なんとか踏みとどまった。


「これを入れれば、『カラダ探し』が終わるんだ……」


そう呟き、恐る恐るそれを拾い上げようと手を伸ばす。


皆、この頭を乱雑に扱ったんだろうな……自動販売機の角にも当たってたし。


もしも、目玉とか脳が飛び出していたらどうしよう。


そんな事を考えながら、私は遥の頭を拾い上げた。


私が手に取った遥の頭部は、ひどい状態になっているどころか、かすり傷ひとつ付いていないきれいなものだった。


目を閉じて、眠っているかのような遥の表情は、美しさすら感じる。


これを見ると、決して死んではいない、まだ生きているのだと思えてならない。