理恵がそう考えた、ほんの一瞬の間だった。


階下に、遥の頭を投げるという行動に移ろうとした時には……すでに理恵の身体は「赤い人」の腕によって、貫かれていたのだ。


「あ……」


最後の呟きと共に、遥の頭を留美子の手に乗せて息絶えた理恵。


しかし留美子は、最後の理恵の行動に驚き、慌ててそれを放り投げてしまったのだ。


幸運だったのは、放り投げた方向が、ホールにいる明日香の方だった事。


でも、遥の頭部を放り投げた時には、留美子はすでに「赤い人」の腕に貫かれて死んでいた。


健司の咆哮から始まったこのリレーは、遥の頭をホールに投げた事により、終わらせる事ができたのだ。









……さっきから、校舎全体が震えるような叫び声が、何度も聞こえて、その度私は身をすくませている。


その合間に耳に入る高広の怒鳴り声や、理恵と留美子の会話。


いつ上の廊下から、遥の頭を投げられても良いように、棺桶の横で大職員室の前を見ている私は、いよいよその時が訪れたのだと理解した。


皆と近くにはいるものの、私だけ一階のホール。


今にも起き上がりそうな遥がいるこの場所で、私は寂しさを感じていた。