「うぐぅっ! おいっ! まだかよ!」


その痛みに転倒した高広が叫んだ。


高広に、ぬいぐるみの頭部を投げられた留美子と理恵はあせっていた。


「赤い人」と高広が、競うように怒鳴り合った事で身体がすくみ上がり、その場にかがんでしまっていたのだ。


「何なのよこれ! 高広も張り合うなっての!」


そう言いながらも、うさぎのぬいぐるみの耳を持ち、綿が露出した部分を理恵に向ける。


「わ、私が出すの!?」


「私が持ってるんだから、理恵が出さないと、他に誰が出すのよ!」


怖がりの理恵に、遥の頭を引き出させようとする留美子。


彼女もまた、恐怖から冷静さを失っているのだろう。


両手でしっかりとぬいぐるみを持ち、理恵がその中に手を入れるのを待っていた。


「ずるいよ……私だって怖いのに」


そう呟き、渋々と言った様子で綿を出していく。


その大きさから、綿は遥の頭部を包むように詰められているようで、全部出したところで、糸がほつれて開いた穴から頭部が出るとは思えなかった。


そして、理恵の手にコツンと当たる硬い物。


「留美子、振ってみて! この穴じゃあ、頭が出ないよ」


手を入れてみて、そう判断した理恵の言葉に、あからさまに嫌そうな表情を浮かべた留美子は、ぬいぐるみの耳を持って上下に振った。