何度も耳に届いた「赤い人」のものだと思われる咆哮、そして翔太の叫び声。


それらを聞いて、健司が泰蔵に勝ったのだと、高広は感じていた。


「お前ら、翔太がもうすぐ来るからよ。準備しとけ」


翔太が必ずここまで頭を運ぶ。そう信じ切った口振りで、留美子達の方を見て呟いた。


「わ、わかってるっての! あんたこそ、ちゃんと時間を稼いでよね!」


留美子の言葉に、軽く右手をあげて合図をする。


高広は考えていた。


この中の誰よりも頭が悪く、暴力的な自分は、この「カラダ探し」で何ができたのかという事を。


もしも、このメンバーじゃなかったら、いろんな謎が解ける事はなかっただろう。


でも、その中で自分は必要とされていなかった。


頭を使う事は苦手だし、「呪い」なんてどうでも良い。何もしなくても、翔太や理恵、明日香が考えてくれたから。


だから、その分皆を信じた。


山岡泰蔵に取り憑かれた健司でさえも、やると言ったからそれを信じた。


例え、誰にも信用されてなくても良い。


ただひとり、明日香が信じてくれていれば、それだけで何でもできる気がするから。


そんな事を思いながら、階下のホールにいる明日香を、一目見ようとした時だった。


翔太の、高広を呼ぶ声が聞こえたのは。