俺のせいで、皆の明日が来なくなってしまう。


首から下が動かない健司は、そんな事を考えながら、祖母の写真に写っていた、うれしそうな3人の笑顔を思い出した。


婆ちゃんは……素直な泰蔵の事が好きだったと言っていた。


泰蔵も、良くしてくれた婆ちゃんを好きだったはずだ。


「婆ちゃんが……キヨが悲しんでるんだ……明日が来ないと……お前の写真が見られないんだ!」


一か八かの賭けだったに違いない。


振り絞って出した声が、泰蔵に届いたのか……泰蔵の美子に対する想いが、少し揺らいだと健司は感じた。


生きるか死ぬか、健司ではなく、祖母の想いを乗せた言葉は、泰蔵の呪縛をゆるめた。


解放された……とまでは行かなかったが、健司にとってはそれでも十分。


目の前のぬいぐるみを触り、硬い部分を確認する。





「まっかにまっかにそめあげて~」



健司がぬいぐるみを触っていても、「赤い人」の様子は変わらない。


重要なのは、触る事ではなく、奪う事だと理解した。


そして、触っていたぬいぐるみの頭部に、硬い物があるという事に健司が気づく。


ご丁寧に、うさぎのぬいぐるみの頭の中に、遥の頭が入ってるのか。