そして……。



「キャハハハハハハッ!」



無邪気な笑い声を上げながら、健司の背中に飛びついた「赤い人」。


ドンッ!という衝撃を感じ、その腕が自らの胴に回されて、ぬいぐるみが目の前にあるのに、健司はそれに触る事もできなかった。






「あ~かい ふ~くをくださいな~」





歌が唄われ始めた。


「赤い人」が、いくら歌を唄おうと関係はない。


しがみつかれているのに動けない。


「赤い人」以上に、泰蔵の意識が健司を邪魔していたから。





「し~ろい ふ~くもあかくする~」





こうなってしまっては、「赤い人」の歌など、ただの雑音でしかない。


健司が、泰蔵に負けてしまうのも時間の問題だった。


もうダメだ、このまま何日も同じ日を繰り返して、皆、11月9日に閉じ込められてしまうんだ。


俺が、泰蔵を殺した爺さんの孫じゃなければ、こんな事にはなっていなかったかもしれないのに。