「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
喉がつぶれても良い。
そう思いながら、校舎全体に響き渡るような声で、健司は咆哮した。
健司の咆哮が、生産棟にいる翔太、大職員室の前にいる高広と留美子、理恵、そしてホールにいる明日香にも届き、その時が訪れたのだという事を皆が理解した。
その中で、一番動揺したのは翔太。
声の発生源まで、距離にして50メートルほどの閉ざされた空間での大咆哮にすくみ上がり、脚が震え始めたのだ。
「い、今のはどっちだ? 『赤い人』を見つけたのか? それとも泰蔵になったのか?」
こんな状況下でも、リスクの方を考えてしまう。
翔太の悪い癖だ。
そして、また明日やり直せるのならば、いったんここから離れて、違う作戦を立てた方が良いのではないかとさえ思っている。
頭の中では、逃げるか待つか、その二つの考えがグルグルと回っていたが、翔太は自分の頬を叩き、その場に留まった。
今までの「カラダ探し」を思い出してみれば、翔太が他人を信用せずに、自分が助かろうとしたから、それが引き金になり、皆の心がバラバラになったのだ。