突然の健司の言葉に、驚きを隠せない私達。


でもそれは全員ではない。


高広だけは驚く様子もなく、長椅子に腰を下ろしている健司の前に立った。


「お前、やれるのか? 『赤い人』の前で泰蔵になりましたじゃ、シャレになんねぇぞ」


健司を見下ろして、そうたずねた高広に、代わりに答えたのは翔太。


「こんな状態でやれるわけがない。考えればわかる事だろ!」


高広の腕をつかみ、その可能性を否定する。


翔太の言う通り、何もしていないのに疲労困憊……いや、もう瀕死に近いようにも見えるのに、本当に大丈夫なのだろうか?


「俺は健司にきいてんだよ。早くしねぇと、泰蔵になって全員殺されるだろうが!」


その言葉もまた正論。


どちらを選ぶかなんて、考えている余裕すらない。


他に何も思い浮かばないなら、それを試すしかないのだ。









『「赤い人」が、工業棟二階に現れました。皆さん気をつけてください』









「赤い人」が移動した。


もう、迷っている暇はない。