校内放送を聞いた翔太が立ち上がり、スピーカーの方に顔を向けた。


確かに生産棟の三階から、一直線に玄関に向かって来るとは考えにくい。


と、なると、次の校内放送を待つか、誰かが囮になってここまで連れてくるかのどちらか。


「ねぇねぇ翔太。昼間、八代先生が言いかけた事って何だと思う? 最後のひとつを……ってやつ」


遥のカラダをまだ触っている留美子が、首を傾げながらたずねる。


確かに八代先生は、何かを話そうとしていた。


誰が死んでも大丈夫だとわかったから、その事は皆、あまり考えていないだろうと思っていたけど、留美子が気にしていたのは意外だ。


「俺がわかるわけないだろ? 答えを知らないんだから、先生が何を言おうとしたのかなんてさ。それに、あとひとつで『カラダ探し』が終わるんだ。何が起こっても次の日にはいつもの生活に戻れるさ」


「んー、確かにそうなんだけどさ。最後のひとつだと思うと、やっぱり気になるじゃん?」


最後のひとつを納めた時何かが起こるのか、それとも最後のひとつを納めた人に何かが起こるのか……。


それはわからなかった。


「赤い人」が生産棟にいるという事で、もしも囮が必要になった時の事を考えて私達は話し合う事にした。