「よし、健司。行くぞ」


そう言い、健司の腕を持って、立ち上がらせようとしているのは高広。


しかし、健司はその手を振り払い、にらみつけるような目を向けたのだ。


「触るな……泰蔵になったら……殺されるぞ」


その目からは涙があふれていた。


健司は今何を思っているのだろうか。


皆を殺したくない? 泰蔵に負けたくない? それとも、苦しくてたまらないだけなのか。


いや、もしかすると、そのすべてなのかもしれない。


「その時はその時だろうが。泰蔵になって俺達が殺されるなら、健司が泰蔵に勝てる日まで待つか、違う作戦考えればいいだけじゃねぇか。おい、翔太も手伝え。ホールまで運ぶぞ」


「あ、ああ。わかった」


そう返事した翔太だったけど、健司が泰蔵に変わった時の事を考えているのか、恐る恐るといった様子で近寄る。


そして、ふたりによって両脇を抱えられた健司は、私達と一緒に、校舎の中に入った。


今日が最後の「カラダ探し」になる事を祈って、棺桶が置かれているホールへと向かった。


「健司、ここに座ってろ。俺達も今日はここで待機みたいだからな。泰蔵になっちまったら全滅だ」


ホールにある長椅子に健司を座らせて、対面の長椅子に腰かける高広と翔太。