高広でさえ、私を抱いていた事を覚えていないのだから、余計に説明が難しい。


私は説明を諦めて、「赤い人」に話をスライドさせた。


「ホールで『赤い人』を待つのは良いとして、旧校舎に現れたり、工業棟みたいな遠い場所に現れたらどうするの?」


「急に話を変えたねぇ。まあ、『カラダ探し』が終わったら、じっくり聞かせてもらうからね。ふたりがどこまで進んだのか」


ニヤニヤした笑顔で、再び話を私と高広の事に戻そうとする留美子。


もう、どうだって良いじゃない。


「そ、そうだな。ふたりの事は、終わらせてからでいいとして、旧校舎の場合は次の校内放送を待てば良い。工業棟なら、誰かが囮になって誘き寄せるか、近くにくるまで待てばいいんじゃないか? でも、これはぬいぐるみの中にカラダがあるっていう事が前提だけどな」


そう、もしもその中に遥の頭がなければ、その時点で今日は終わってしまう。


それに、もうひとつ気になる事もある。


私達から離れた場所で頭を抱えてかがんでいる健司もまた、どうなるかわからなかった。


「おい、大丈夫か健司」


いつもなら、校舎に入る前はニタリと笑っているだけなのに、今日はなんだか違う。