……高広の顔が近い。


ほんの少し、顔が近づいただけで、頬が触れ合ってしまいそうなほどの距離に……治まったはずの胸の高鳴りが、再び私を襲った。


「明日香、聞いてんのか?」


今にも頬が触れ合ってしまいそうなくらい近くで、高広の目を見つめていた私。


そうたずねた高広が、私の方を向いた時、それは起こった。







急に私を見た高広の唇と、私の唇が……かするように触れ合ってしまったのだ。


その瞬間、私の頭の中が真っ白になる。


ほんの少し、ごくわずかな時間だったけれど……私にはそれが、とても長い時間に思えた。


すでに唇は離れているけれど、その感触が残っていて、胸の高鳴りが止まらない。


見つめ合ったまま、しばらく時間が流れた。


高広の顔が迫ってくれば、私は本当にキスしてしまう。


嫌じゃないんだけど……それは今じゃないような気がする。


でも、私はその瞳を見つめたまま、動く事ができない。


高広に任せよう。


キスされても、抱きしめられても……好きになってしまったから、それでもかまわない。


そう思い、ゆっくりと目を閉じた。









「ああっ! くそっ!! 悪い、明日香。そんなつもりじゃなかったんだ!」