私達が昼間にする事は、もう何もないのだから。


「明日香、ちょっといいか?」


理恵の隣に座っていた私を背後から呼んだのは高広。


旧校舎に行く前に、私と理恵が話していた屋上の南側の方を指差している。


「あらあらぁ? ついに愛の告白?」


皆の前で私を呼んだら、こうなるってわかるはずなのに……。


「違います! もう、留美子はなんでもそっちの方に結びつけすぎだよ!」


とは言ったものの、このタイミングで呼ばれたら、私だってそう思ってしまう。


皆がいる前で話せない事なら、たぶんそんな話だろう。


私はゆっくりと立ち上がり、スカートに付いたゴミを払って、先を行く高広の後についていった。


屋上の南側、さっき理恵と一緒にいた場所で、高広は柵に手を置いて、遠くを見ていた。


私は、高広の隣で柵に腕を乗せて、同じように遠くの方を眺める。


「カラダ探し」の事で、あまり考える余裕がなかったけれど、山は徐々に紅く染まりつつある。


「なあ、明日香。今晩で『カラダ探し』が終わるかもしれねぇんだな」


いつになく、寂しげな眼差しでどこかを見ている高広。


「カラダ探し」が終わるかもしれないのに、うれしくないのかな?