目の前を横切った猫が、車にひかれたけれど、それももう三度目。


私と理恵は、同じ事を考えている……それは、理恵の目を見ればわかる。


学校に着いて、玄関で会ったのは健司だった。


「昨日」は、留美子が怯えていたけど、今日は健司が誰かを待っている様子で、柱にもたれて立っていた。


「赤い人」に追われていた時に、健司の血で滑ったせいで私は殺された。


でも、それは健司のせいじゃない。


「明日香、理恵……ちょっといいか？」


珍しく、健司の方から話しかけてきた。


早く、翔太を殴ってやりたいけれど、健司から話しかけられたのは初めてだ。


「どうしたの？　私達、翔太に用があるんだけど……」


私がそう言った時、無表情の健司の眉間に、わずかだがシワが寄った。


「ふたりもか？　まさか、昨日翔太に『赤い人』を押し付けられたのか？」


「え？　もしかして……健司も？」


理恵が驚いたように、健司に詰め寄った。


「『昨日』の最初の校内放送あっただろ？　あの時、翔太は階段の近くで『赤い人』に遭遇したと思うんだ。俺は三階にいたから翔太の声が聞こえて、あいつが三階に来たからさ、俺も逃げたんだ……反対側の階段から二階に下りて、生産棟の方に。それで……翔太に襟をつかまれて、倒されたんだよ」