健司の家に行った時とは違って、少しは落ち着いているように見える。


ひとつひとつ、怒らないで質問すれば、話を聞き出せそうな気がした。


健司から聞き出せた事は、それを経験していない私達にとって、どれも信じがたいものだった。


山岡泰蔵に身体を乗っ取られて、自由を奪われけれど何をしているかを見る事はできる。


そして、身体を奪われる代わりに山岡泰蔵の意識や記憶が断片的に健司の中に流れ込んでくるというのだ。


「あんたは美子の名前を知ってたよね? だったら、どうして美子が殺されたか、山岡泰蔵の記憶からわかるんじゃないの?」


半信半疑、だからこそ留美子はその質問をしたのだろう。


私達が知っている事を言って、それが私達が知らない事とつながれば、その話は信じられるかもしれないから。


皆、同じような事を思っていると、その表情から読み取れた。


「断片的だって言っただろ……詳しくはわからないけど、嫌な記憶はある。俺は首を絞められていて、目の前には女の子が倒れているんだ」


それはもしかして、雄蔵に首を絞められていたのだろうか?


知的障害を持った兄を疎んだ、弟の手によって殺された。


翔太が立てた仮説と合致している。