翔太はそう言うけれど、何を考えればいいのだろう?


クラブハウスや部室といった、外にあるような部屋くらいしか調べていない場所は残っていないのに。


そう思っていた時だった。


「健司! お前、来たのか!」


教室の後ろから、高広の声が聞こえた。


うれしそうにそう言った高広と違って、私達は心中穏やかではない。


翔太が慌てて立ち上がろうとするのも待たずに、私と留美子は、教室の後ろに立っている高広の所に駆け寄った。


理恵はどうするのか、自分の席に座っている姿をチラリと横目に見ると、やっぱり少しは気になっているようだ。


「高広、健司が来たの!?」


留美子が誰よりも早くたずねると、廊下を指差して見せる高広。


その指の先には、両手をポケットに入れ、バツが悪そうに視線をそらして立っている健司の姿があったのだ。


「健司! あんたねぇ!」


と、予想通り健司に文句を言おうと詰め寄る留美子を、高広が制する。


「待て、今まで家を出なかったこいつが学校に来たんだ。俺達に何か用事があるんじゃねぇのか?」


高広に手をつかまれて、そう言われた留美子は、ムスッとした表情を浮かべてその手を振り払った。


「放してよ! わかってるっての! 手なら、明日香と手をつなげばいいでしょ!」