本当は止めるべきなんだろうけど、もうすぐこんな事が普通に思える日常に戻る事ができる。


そう考えると、なんだか微笑ましくもあった。


学校に到着して教室に入ると、私達にとっては違和感しかない光景が目に飛び込んできた。


あの、誰も気にも留めていなかった遥が、ひとつのグループの中心となって、皆と笑い合っているのだ。


その様子を頬杖をつき、訝しげな表情で眺めている翔太。


「おはよう、翔太。カラダは玄関にあったよ」


「ああ、おはよう。そうだろうな……『昨日』と比べても、雰囲気がまるで違う。皆、俺がここにいる事も気づいてないみたいに感じる」


私にあいさつを返した後、眼鏡の鼻にかかる部分を、左手の中指でクイッと上げた。


翔太がそう言いたくなる気持ちもわかる。


クラスメイトの多くが不自然なほど、遥に声をかけているのだ。


まるで、私達にそれを見せつけているかのような光景。


「なーんか、居場所がないよね。遥と私達の立場が逆転したみたいな感じがするし」


荷物を自分の席に置いた留美子が、私達の所に来てボヤき始めた。


「とりあえず……屋上かな? 後ひとつ残っているって事は、まだ考えなければならないって事だからな」