だから、それの意味がわからない。


山岡泰蔵に取り憑かれているはずの健司が、どうして高広を助けるのか。


その頭の怪我も、健司がやったんじゃないの?


「まぁ、詳しい事は朝に話すわ。さっさとここを調べようぜ」


今日は高広も限界なのだろう。


呼吸も荒くなっていて、出血も激しい。


こんな状態で、話ができる事が不思議なくらいだ。


理恵と手分けして調べた職員玄関にも、結局カラダはなく、私達は放送室に行くしかなくなっていた。


「高広、放送室に行くよ。私達につかまって」


もう、高広が何を言おうと関係ない。


私と理恵で、高広を挟むようにして、腕を肩に回して立ち上がった。













『「赤い人」が、東棟二階に現れました。皆さん気をつけてください』











そんな校内放送が流れたのは、私達が事務室の前の階段を上っていた時だった。


できるだけ多くの場所を調べたくて「赤い人」から逃げていた時は、この放送は恐怖でしかなかったけど、今は違う。


私達が向かっている場所は、それを流している放送室。


ドアノブに触れただけで背後に「赤い人」を呼ばれてしまうのならば、そこに「赤い人」がいたところで、大した問題じゃない。