しかし……。


「ちょっと待て……何を勘違いしてんだよお前ら……」


そう言いながら、壁の角をつかんだ手が動く。


ゆっくりとそこから姿を見せたのは……血まみれの高広だった。



「なんとかたどりつい……って、なんだよこれ」


そこに広がる光景に驚いたのだろう。


でも、それ以上に、「赤い人」と健司を前にして、よく生きてここまでこれたと、私の方が驚いていた。


高広の血は、どうやら自分の物らしく、頭部から垂れている液体がそうだという事を私に教えてくれていた。


「高広……死ななかったんだね……」


無事とは言えないようだけど、それでも生きていてくれた事がうれしくて、滑る足元に注意しながら、ゆっくりと高広に歩み寄った。


「おぅ、でも、頭はフラフラするけどな……健司が、最後は助けてくれた」


健司が助けた?


その言葉の意味が理解できない。


だって、健司は私達を殺そうとしていたわけで、助けるなんて思えなかったから。


「どういう事? 健司がやったんじゃないの? その怪我」