「赤い人」は、前の方の机に乗っていたのに……。



私が隠れた机が揺れて、思わず机の上を見上げてしまった。


「赤い人」は……私を見下ろして、ニタリと、不気味な笑みを浮かべていた。


み……見つかった。


いや違う、きっと「赤い人」は、私がここにいる事に気づいていたんだ。


気づいた上で、私が恐怖するように遊んで、そしておびえる私を追い詰めて殺す。


「赤い人」は、見た目通り子供なんだ。


子供が、昆虫の足や羽根をちぎって、動けなくして遊ぶのと同じ。


この少女の前では、人間もそれと同じなのだ。


どうしよう……逃げなきゃいけないのに、怖くて動けない。


でも……動かないと殺される!






「まっかなふくになりたいな~」






歌を唄い終わったのだろう。


「赤い人」は、私を見下ろして、不気味な笑みを浮かべたまま……私の背中に移ろうと、机から飛び下りた。







「いやああああっ!」






私は床を蹴り、滑るように、教室の後ろにあるロッカー際まで下がって、間一髪それを避ける事ができたけど、「赤い人」依然として私を見つめている。