高広が開けたドアから大職員室を出て、西棟へと入った。


もう、どこに隠れても見つかってしまいそうな気がする。


「こっちだ!」


私は引っ張られるままに、廊下の北側、階段の横にある教室へと入った。


と、同時に、廊下に響き渡る「赤い人」の笑い声。


今度は、見られる前に、教室のドアを閉める事ができたから大丈夫のはず。


生徒玄関への道のりが……やけに遠く感じた。


「アアアア……」


西棟の廊下に出て、私達を探しているのだろう。


今まで聞いた事のない、「赤い人」のうなり声がドア越しに聞こえる。


一度だけ、怒っているような咆哮は聞いた事はあるけど、それとは違う。


西棟の南側、北側、そして三階と一階、この位置なら、選択肢はいっぱいある。


追いかけられても、誰かに見られてない限り、この教室を特定できるはずがないのだ。


うん? 誰かに……見られて?


そうだ、旧校舎で私は美紀の姿を見た。


いや、たぶん、美紀が私達を見ていた。