「キャハハハハハッ!」








物音がするのを待っていたかのように、廊下に響き渡る笑い声。


こんな所で私は、早くも「赤い人」に気づかれてしまった。


「馬鹿! 何してんだよ!」


ゴミ箱を蹴ってしまった事で、ぼう然と立ち尽くす私の手を取り、引っ張ってくれる高広。


これが私ひとりだったら、絶対「赤い人」に追いつかれて、殺されていた。


「ごめん!」


もう、謝る事しかできない。


せっかく高広が、教室から連れ出してくれたのに、私のせいで気づかれてしまった。


「謝るくらいなら早く走れ!」


そう言いながら、大職員室の西棟側のドアに走る。


もう少し……と、いう所で、東棟側のドアが開けられる音が背後で聞こえた。


「キャハハハハハハッ!」


それと同時に、大職員室の中に響く「赤い人」の声。


気になるけど、今振り返ってはいけない。


その姿を見てしまえば、次に振り返る事ができなくなってしまうのだから。