この状況から、どうやって抜け出せば良いのだろう。


廊下の奥から聞こえていたガラスを引っかく音も、折り返したのか、こちらに徐々に近づいて来ている。


また、あの音を聞かなければならないのかと思うと、それだけで身震いをしてしまう。


でも、高広はまだ動かない。


追いかけられても逃げ切れるという自信があるからか、床に腰を下ろしたまま、廊下の音を聞いている。


高広は逃げ切れると思っているかもしれないけど、私は違う。


昨晩だって、簡単に追いつかれて、振りほどく力もなく殺されてしまったんだから。


そんな事を考えていると……。







バンッ!という、何かが何かにぶつかったような、短い音が廊下に響いた。


その瞬間に、教室の後ろのドアを指差して腰を上げる高広。


慌てて私も立ち上がり、指示されたようにドアの前に進む。


音を立てないように、ゆっくりとドアを開けて、高広が廊下を確認する。


そして、私の手を引いて、教室から飛び出したのだ。


その時、廊下の南側をチラリと見た私は、今の音が何だったのかを理解した。


あれは、「赤い人」が隣の教室のドアを開けた音だったのだ。