高広に引き寄せられた私は、バランスを崩して、ゆっくりとその脚の上に座らされた。


何が起こったのか、良くわからない。


わかっているのは、私が高広に抱きかかえられて、お互いの顔が近くにあるという事だけ。


こんな時なのに、その行動に胸がドキドキする。


そして、近づいて来る高広の顔。


「カラダ探し」が終わったら、返事をするって言ったのに……。


嫌じゃないけど、ここでキスをされると、状況に流されてしまいそうで。


そう思っていても接近する高広の顔に、私は覚悟して目を閉じた。


「まだ動くのは早い。戻ってきたら、どうすんだよ」


耳元でささやかれたその言葉に、私は不意を突かれたような気分だった。


せっかく覚悟したのに。


でも、この方が高広らしい。


約束は破らない、私の事を小さい頃からずっと守ってくれてた、鈍感な高広の方が。


それに、なんだか安心した。


「赤い人」の恐怖を、一瞬でも忘れられたから。


私達がやるべき事は、生徒玄関にたどりつく事。


一番簡単な事なのに、難しいこの状況を、どう打開すればいいのか……高広に任せてみようと思った。