「そんなの私もわからないよ。高広はわからないの?」


「んな事、俺にきくなよ」


じゃあ、私にもきかないでほしい。


いつまで健司は玄関の前で唄い続けるつもりなのだろう。


今までは、「赤い人」や健司から逃げながら、カラダを探して来た。


でも、今日はふたりを待っている。


「赤い人」も健司も動いてくれないと、私達が生徒玄関に行く事すらできないのだ。


と、そんな事を考えていると。









『「赤い人」が、東棟一階に現れました。皆さん気をつけてください』










東棟一階……どうしよう、「赤い人」が私達のいるフロアに現れた。


もしも、留美子達のいる西棟の方に健司が行けば、生徒玄関に行くためにはかなりの遠回りをしなければならない。


「明日香、上に行くぞ」


耳元で高広がささやき、私の手を引いて階段を上る。


「赤い人」が、階段を上がってくる可能性はあるけれど、それも足音と歌声で判断しなければならない。


二階に着いた私達は、階下の音に耳を澄ませた。