「高広、起きてよ!」


蹴る事なんてできないから、腹部を叩いてみた。


ポスッという、なんだか情けない音が聞こえたけど、「うっ!」という短い叫び声が聞こえて、高広は目を覚ましたのだ。


「なんだ!? ん? 明日香か……」


そう言いながら、ゆっくりと上体を起こして辺りを見回す。


しばらくして、自分が置かれている状況を把握したのだろう。


その場に立ち上がり、大きなあくびをして、玄関のドアが開くのを待った。


皆が目を覚まし、玄関のドアが開くまでのわずかな時間で、どこを探すかを話していた。


「私達は生徒玄関調べてから、放送室に行ってみるよ。翔太と高広はどうすんの?」


放送室を調べるという時点で、今日はそこで終了という事を意味している。


その言葉に、翔太は反対するかと思ったけど。


「そうだな。どうせ調べなければならない事だし、残っている細かい場所を調べる方が良いと俺も思う」


意外とすんなり受け入れてくれた。


翔太も、もうどこを探せば良いかがわからないのだろう。


すべての教室や部屋を探して、校内で残っているのは生徒玄関と放送室だけ。


「あ、玄関と言えば、職員玄関は調べたの? 事務室の前にある……」