この瞬間が一番好きなのに、いつ遥が来るかと思うとゆっくりもしていられない。


入浴剤で白く濁ったお湯に肩まで浸かり、フウッと一息。


すぐに上がろうと、湯船の縁に手をかけた時だった。






ボコボコッと、湯船の中から出てきた大きな泡が、目の前で弾けたのだ。


その弾ける泡を見て、遥が来たのだと理解した。


でも、湯船から出ようとしたけど、怖くて身動きが取れない。


衣類を着ていないせいか、裸の時に感じる恐怖はいつもとは比べ物にならない。


身を守る物が何もない、むき出しの状態。


泡が弾けた所を凝視して、私は息を飲んだ。


でも、何かが起こる様子はない。


てっきり今の泡の所から、遥が出てくるかと思ったのに。


「今の泡は何だったの?」


良くわからない状況に首を傾げて、少しは動くようになった身体を両手で支えて、お湯から上げた時にそれはやって来た。


照明が消え、突然暗くなる視界。


前にも一度こんな事があったけど、今度は本当の停電かもしれない。


ゆっくりと顔を上げて、辺りを見回していると、再び照明が点いた。











と、同時に目の前にいる、上下が逆さまになっている遥。