すぐさま振り返って、遥が来ていないかを確認するけど、そんな人影はない。


ホッと胸をなで下ろし、次は身体を洗うために、洗身タオルに手を伸ばした。


ボディソープのポンプを二回押し、それをタオルで泡立ていた時だった。


目の前の鏡が、洗面所にいる黒い影を映していたのだ。


鏡に映った黒い影に私は、心臓を握りつぶされるような恐怖と不安に襲われた。


私の大好きなお風呂で、二回も遥が来るなんて最悪だ。


もう、お風呂には入れないかもしれない。


背筋に冷たい物を感じ、呼吸が荒いまま、ゆっくり振り返ってみると……。


黒い影など見えず、ドアを開けてみても、そこには誰もいない。


私の見間違いだったのかなと、ドアを閉め、身体を洗うために振り返った。


私は、お湯を出しっぱなしにしていたシャワーを手に取り、悪寒が走った背中にそれをかけて、身体を洗う。


今のは何だったのだろう。


怖い怖いと思っていたら、何でもない事でも疑ってしまう、「疑心暗鬼を生ず」というやつだろうか?


これ以上怖い思いはしたくない。


身体を洗うのもそこそこに、シャワーで泡を流して湯船にそっと浸かった。