「……ないなぁ、ゴミ箱かな?」


と、ロッカーを閉じた時だった……。









「あ~かい ふ~くをくださいな~」









と、いう歌が……近づいてきていた。


嘘でしょ……「赤い人」が、こっちに来てるの?


さっき、翔太の悲鳴が聞こえた。それからすぐに階段を下りて、東棟に向かってきたっていうの!?



どうしてこっちに来るのよ!


言い様のない不安が、私の身体を包み込む。


今からこの教室を出れば、間違いなく「赤い人」とはち合わせしてしまう。


この教室のどこかに隠れなければ。


と、言っても……机の陰くらいしか、隠れる所がない。


一番西棟側の、後ろの机の陰に身を潜めた私は、「赤い人」が通り過ぎてくれる事を祈った。






「まっかにまっかにそめあげて~お顔もお手てもまっかっか~」








耳に入って来るその声は、私には死者が呼んでいるように聞こえて……。


ただでさえ、ピリッと張り詰めていた空気が、まるで、カミソリで身体を切り刻まれているかのように痛く、冷たい物に変わって行く。