「お前なあ、そんな事言ってる場合か!? パンツのひとつくらい見えたっていいだろ! 上れないよりマシだ!」


パンツくらいって……。


デリカシーに欠けるその言葉に、私は少し腹が立った。


真下からスカートの中を見られている状況で、気にするなっていう翔太の神経を疑う。


「翔太が無理なのに私が出来るわけないでしょ? それなら高広を探して上ってもらった方が良いよ。『赤い人』に殺されてなければ……の話だけど」


殺されていないにしても、まだ逃げ続けているというのなら、「赤い人」も付いてくるはず。


それをどうするかが問題だった。


高広はどこにいるのだろう。


走り続ける事ができる場所と言えば、校舎の周りの道とグラウンドくらいしかない。


校舎の一番南側に体育館がある。


グラウンドは体育館のさらに南側。


いくら高広が頭が悪いと言っても、理恵と留美子が、屋上から見てしまう可能性がある場所を通過するとは思えない。


だとすれば、旧校舎からも南側に位置している、グラウンドを走り続けていると考えた方が自然かもしれない。


「明日香、高広はまだ走り続けてると思ってるのか?」


それはどういう意味だろう。