でもあれは、私の不注意になるのかな?


きっと、美紀らしき女の子が「赤い人」を呼び寄せたに違いない。


私が見られなければ、もっと早く旧校舎を調べる事ができたかもしれないのに。


でも、高広が引き付けてくれなければ、屋上に「赤い人」が現れていた可能性はある。


そう自分に言い聞かせて、私は旧校舎を出た。


遥の右脚を抱えて、理恵と留美子が待つ場所へと向かう。


目の前を高広が通り過ぎてもすぐに身を隠せるように、木の陰から陰へと移りながら。


旧校舎から出たせいか、あの不気味な雰囲気から解放されて、感じていた恐怖のすべてが取り払われたようで、足取りも軽くなっていた。


「高広はどこにいるんだろ。足音も、『赤い人』の声も聞こえないけど」


独り言を呟きながら移動する私は、さながらスパイ映画の主人公だ。


なんて、そんな良い物じゃないけど。


「赤い人」が追いかけている時は、笑い声が聞こえるはずだから、それが聞こえていない今のうちに走っていけば、見つからずにたどりつく事ができるかもしれない。