「俺もできるならそうしてほしいんだけどな……屋上に残ってるふたりが、いつまでも安全だとは言えないだろ」


そう言えば、理恵と留美子が残っていたんだ。


そして、新校舎には健司がいるはずだから、ふたりが見つかってしまえば殺されてしまう。


そうなってしまえば、せっかく見つけたカラダも、引き上げる事ができないのだ。


「そう……だね、まずは右脚を棺桶に納めないとね」


翔太にうなずき、私はそこに置かれた右脚を手に取った。


「じゃあ、カラダを渡したら戻ってくるからね」


遥の右脚を抱えて、私は翔太に笑顔を向けた。


この、異様な雰囲気が漂っている旧校舎から出る事ができる。


それがうれしくて、私は自然に顔が綻んだ。


「それまでには終わってるかもしれないけどな。明日香も気をつけろよ。高広が今、どこを走ってるかわからないんだからさ」


カラダをひとつ見つけた事で、余裕が生まれたのだろう。


さっきのような刺々しさは消えていた。


皆がそれぞれ、自分のやるべき事をやっている。


私も自分ができる事をしないと。


翔太に手を振って温室を後にした私は、廊下を歩いて玄関に向かった。


今日はずいぶん長い時間、「カラダ探し」をしている。


皆、「赤い人」や放送室の中の人に見つからないように、細心の注意を払って行動してたから、ここまで来る事ができたのだ。