と、そう思った時。






「こっちだ! 来い!」





ガンッと、何かが開く音がしてその直後、高広の声が聞こえた。





「キャハハハハハハッ!」






走り出す高広の足音。


「赤い人」がそれを追いかけて部屋を出ていったのだ。


しばらくして、再び職員室に静寂が訪れた。


相変わらず私は、デスクの下で震えているだけ。


きっと、私が隠れている場所に「赤い人」が来たから、高広が助けてくれたに違いない。


震える身体を滑らせるようにして、私はデスクの下から出た。


「明日香、高広が見つかったのか?」


ロッカーにもたれかかり、まだ脚が震えている私に声をかける翔太。


私と同じようにデスクの下に隠れていたようで、動かした椅子を戻して、室内を見回している。


「きっと、私が見つかりそうになったから、高広が身代わりになってくれたんだと思う」


「うん? どうして高広が、明日香の身代わりになったんだ?」


そうか、翔太は、高広が私の事を好きだって知らないのか。


なんて、そんな話はどうでもいい。


「ほ、ほら、私は足が遅いからさ。私が逃げてもすぐに追いつかれるって思ったんじゃないかな……」