ダメだ、やっぱり気づかれていたんだ。


足が遅い私が、どこまで「赤い人」を旧校舎から引き離せるかわからない。


言い様のない不安で、喉が渇く。


激しく動く心臓が、私の身体の一部じゃないみたいで……祈りながら、胸を押さえた。








「まっかなふくになりたいな~」







私が隠れているデスクの前で、「赤い人」の声が止まった。


もうダメだ。私の前に「赤い人」がいる。


目を閉じて、祈る事しかできない。


ただでさえ気持ち悪い雰囲気なのに、「赤い人」に見つかってしまったら、私は逃げる事もできないかもしれない。


脚が面白いほど、小刻みに震えていて、こんな状態で走れるとはとうてい思えないから。


でも……無情にも、私の身体を隠してくれている椅子の、キャスターの音が聞こえた。







キィィィ……。






逃げなきゃ、早く動かなきゃ……でも、そう思っても身体が動かない。


このまま、私は殺されてしまうのかな。


旧校舎から「赤い人」を引き離さなきゃならないのに。