カラダ探し

廊下の方じゃない……階段の方から、あの歌が聞こえた。


「赤い人」が工業棟にいるなら、この歌を唄っているのは……健司だ。


そのせいか、踊り場で聞いた時のような、上からか下からかわからないというような事はない。


確実に上から聞こえている。


「おいおい、マジかよ……健司まで来るなんて」


どうすればいいかわからないといった様子で、階段を見上げる翔太。


「どこかに隠れないと、見つかったら殺されるよ」


「わかってるよ、でも……どこに隠れる?」


ささやき声で言い合いを始める翔太と留美子。


そんな事をしてる場合じゃないのに。


でも、翔太が悩む理由は私にもわかる。


階段を下りれば足音で気づかれるかもしれない。

廊下に戻り、交差点を通過すれば、「赤い人」に見られるかもしれない。


階段と交差点の間にある教室だって、挟まれる可能性があるのに入りたくはない。


可能性の問題でしかないけれど、「赤い人」に見つかれば、健司にも気づかれると思うから。


「お前ら、考える暇があるなら動け」


口を開いたのは高広だった。


何のためらいもなく廊下に出て、西棟の方に向かって歩き出したのだ。