カラダ探し

「赤い人」が、移動したという校内放送がまだないから、生産棟付近にいるであろうという事がわかる。


それはいいとして、西棟の廊下から生産棟の一番奥までは見通す事ができる。


そして、工業棟への渡り廊下と、生産棟の東と西をつなぐ廊下もつながっている。


端から端まで見通せる廊下同士が、そこで交差しているのだ。


もしも、この廊下のどこかに「赤い人」か健司がいたら、見つかってしまう可能性がかなり高くなってしまうから、そこに注意して進まなければならないのだ。


「どう? 歌は聞こえる?」


「とりあえずは……大丈夫みたい」


大職員室の前の廊下から、西棟の廊下の物音を聞いていた私は、理恵に答えた。


「細かく刻んでいくしかないな。できるだけ走らずに、音を聞きながら進もう」


走ると、かすかな物音を聞き逃すかもしれないから、翔太の言う通り、ゆっくり歩いて行くべきだと私も思う。


5人で、足音を立てないように、私達は生産棟へと向かって歩き出した。


「だりぃなぁ、さっさと走って行けば良いじゃねぇか」


私達が耳を澄ましながらゆっくりと歩いているというのに、それを邪魔するように高広がしゃべりだす。


「だからあんたはバカだっての。さっきの話を聞いてなかったの? 『赤い人』も健司も、今どこにいるかわからないから音を聞きながら歩いてるんでしょ!」