カラダ探し

「赤い人」がどこに向かっているのかはわからない。


それでも、徐々に小さくなって行く歌に、私は安堵していた。


「高広、わざとやってるの? 耳に息を吹きかけるなんて……」


「え、あぁ……そんなつもりはなかったんだけどよ。わりぃ」


私が高広の手を口から離してそうささやくと、高広はそのまま手を頭にやり、申し訳なさそうな表情を浮かべる。


まあ、わざとやったわけじゃなさそうだし、別に良いけど。


それにしても、階下に「赤い人」がいるかと思うと、うかつに身動きが取れない。


物音ひとつで、私達に気づいてしまうかもしれないから。


「とりあえずトイレだよね。一番近いし」


東棟も西棟も、生産棟や工業棟と比べると、どうしてもトイレが汚い。


自分で言ったものの……正直、あまり行きたくはなかった。






それでもなんとか、トイレ、そして一番南側の教室を調べ終わり、私達はまた選択を迫られていた。


まだ移動していないなら、東棟の二階には「赤い人」がいる可能性がある。


「で、どうすんだ? 予定通り二階に行くのか?」


「まだ『赤い人』がいるかもしれないでしょ。今行っても、見つかるだけだよ。それに……放送室もあるし」


この、東棟の南側にある階段を下りれば、渡り廊下を挟んで放送室がある。