カラダ探し

「留美子、高広がすごいわけじゃないと思うよ」


はしゃぐ留美子に、冷静に答える理恵。


「ちっ……言うんじゃなかったぜ、こんなに騒がしいならよ」


「何言ってんの! 海だよ海! テンション上がるっての! 11月とは言え、何年振りのビーチだろ。良かったらまた夏に行こうっと」


電車の中で、他の客の迷惑も考えずに、あまりにうるさい留美子。


「明日香、言えないね……高広の親戚って、おばあちゃんの家でしょ?」


「うん……たぶん」


私と理恵は、昔一度だけ高広のお父さんに連れていってもらった事がある。


海と言っても、船着き場や桟橋がある漁師町に。


そこに着くまでは、黙っておこうと思った。


それから3時間、私達は電車を乗り継ぎ、高広のおばあちゃんのいる漁師町へとやってきた。


駅前の通りでさえも、さびれた感じが否めないこの町を見て、留美子の表情が変わる。


駅から徒歩15分、海が見えた時には留美子が歓声を上げたけど、それが漁港だとわかった瞬間、深い溜め息をついた。


「寒いじゃない! なんなのよ、この汚い船は! それに……くさっ!! 何この匂い!」


海に着いてもうるさい留美子に、今にも怒り出しそうな高広。