「あぁ……ここにもない」


後は、机の中くらいしかないけれど、教室の後ろから見ている分には、カラダが隠されているようには見えない。


机の中だと、入っても腕くらいだけど、この教室にはなさそうだ。


次の部屋に行かなきゃいけないけれど……廊下に出ると、「赤い人」を見る可能性がある。


仮に私が見なくても、「赤い人」に見つかれば追いかけて来るから、うかつには飛び出せない。


ただでさえ、一番南側にあるこの教室は、トイレと階段が隣にあって、次の教室には行きにくいのに。


トイレ……なるべくなら入りたくない。


廊下の物音を聞きながら、教室を出ようとしたその時。







「わたしはつかんであかをだす~」






教室のドアを開ける音と、あの歌が聞こえたのだ。


「赤い人」が、廊下に出てきた。


慌てて教室の中に戻る私。


大丈夫だよね?


ドアを開けたばかりなら……私の姿は見られていないよね?


そう思っては「大丈夫」と、自分に言い聞かせていた。


こっちに来たら私が、向こうに行ったら高広が「赤い人」に襲われるかもしれない。