その瞬間。






『「赤い人」が、西棟一階に現れました。皆さん気をつけてください』







まるで、私を狙っているかのような校内放送に、心臓の動きが早くなる。


あの窓から見ていて、私達が西棟にいる時に、「赤い人」を呼び寄せていたの?


いや、翔太は何事もなく二階と三階を調べ終わったはず。


だったら……私が運が悪かっただけかもしれない。


「ダメだ……早く探さないと……」


教室の中で探すような所は限られている。


掃除用具入れ、机の中、ゴミ箱くらいだ。


「赤い人」の歌は、まだ聞こえない。


廊下にはいないようだから、どこかの教室の中にいるに違いない。


高広のいる教室じゃなければいいけど……。


私が思うのは、その事だけ。


教室の後ろから入った私は、掃除用具入れを開けて中を確認した。


そこにあるのはホウキやモップといった物で、カラダはない。


次にゴミ箱に駆け寄り、それをひっくり返して中の物を出す。