この空間のせいなのか、それとも「カラダ探し」が終われば、生き返るという事がわかっているからか。


このままでは、本当に人が死んだ時にも、悲しめなくなりそうで……。


私はそれが怖かった。


事実、留美子の死体を見ても、気持ち悪いとは思ったけれど、悲しみはあまり無かったから。


「足跡は一階に向かってた……だから、俺達は大丈夫だ」


高広もまた、感覚が麻痺しているのだと、私は感じていた。


私達は西棟に入り、階段を下りて廊下を南に向かって歩いていた。


一番手前にある部屋には高広が入り、私は一番奥の部屋へと向かう。


教室ならば、そんなに調べる場所がなく、時間もかからないだろうから、ひとつの教室をふたりで調べるより、分かれて探そうという事になったのだ。


もう、留美子が死んでいる。


だとすれば、理恵か翔太のどちらか、もうひとりくらい死んでいてもおかしくはない。


それくらいの時間が経過しているのだから。


「中庭か……外に出られないなら、関係ないよね」


校舎の影で、月の光も届いていない中庭を見つめ、私はそんな事を呟いた。


月の光が、東棟の壁を照らして、ただでさえ不気味な夜の校舎を浮かび上がらせている。