確か、まだだったと思う。


「西棟一階かよ……って、留美子が調べてたんじゃねぇのか? 二日目に」


「そ、そうだね……サボってたのかな、留美子の事だし」


留美子ならありえない話じゃない。


探すフリをして、どこかに隠れていたのだろう。


「じゃあ……行くか」


私達は、留美子が残した西棟の一階へと向かう事にした。


私達が西棟に向かうために、渡り廊下を抜け、生産棟に入って南側に曲がった時だった。


階段でそれを見つけたのは。


真っ赤に染まった階段、そしてそこに横たわる死体……。


頭部がつぶされているけど、それが誰だか私にはわかる。


「る、留美子だ……」


久し振りに感じる、胃の中の物が逆流してくるような感覚。


何度もこんな死体を見ているから、慣れたつもりだったけど……やっぱり気持ち悪いのだけは慣れない。


「留美子か……やったのは健司だな。頭を狙ってくるのは、『赤い人』じゃねぇ」


私の目を覆うように、手で隠してくれる高広。


そうとも言い切れないような気はするけど。


私は二日目に、「赤い人」に頭部をつぶされているのだから。


高広に肩を抱かれて、私はそこを通り過ぎた。


私達は、やっぱり人の死に対しての感覚が麻痺しているのかな。