ふたりの視線から逃れるように、私は後ろを向いてメールを開いた。


高広からのメールの内容は……。


『どこにいるんだ?』


無愛想で、絵文字も使わない、飾り気がまったくない一言。


ただそれだけのメールで、私は好奇の目にさらされている。


『今、食事中! これからカラオケに行くの!』


なんだかわからないけど、いらついた私は、高広にそう返信して正面を向いた。


「で? 高広は何だって?」


「何もありません! どこにいるかきいてきただけです!」


ニヤニヤしてたずねた留美子に、そう答える。


これ以上詮索されても、私と高広は本当に何もないのだから。


「怪しいよねぇ……別に減るもんじゃあるまいし、教えてくれてもいいじゃん」


「明日香と高広は仲が良いもんね。保育園からずっと一緒だし」


理恵だって、ずっと保育園から一緒なのに……。

話が進むにつれて、私と高広の関係が深くなっていく。


このふたりの妄想の中だけで。


私はこの後、肯定も否定もせずに、「はいはい」と答える事しかできなかった。