「おばあちゃん、このタイちゃんって、どういう人なんですか?」


今度は私が「タイちゃん」を指差してたずねた。


「タイちゃんはね、主人のお兄さん。だけど知恵遅れでねぇ、主人が面倒を見てたんだ。タイちゃんは優しい人だったで」


知恵遅れ……そして、タイちゃん。


もしかして、このタイちゃんと言うのは……。


「山岡……泰蔵?」


「あれ、よく名前を知ってたねぇ。もしかして、あの事件の事を知っているのかい?」


やっぱり……まさかこんな所で、「山岡泰蔵」に当たるとは思わなかった。


だけど、おばあちゃんの表情は、変わらず笑顔で……山岡泰蔵があんな残酷な事件を起こしたとは思っていないようだった。


「でもねぇ、タイちゃんはあんな事をする子やないよ。子供が大好きで、いつも一緒に遊んでたで」


懐かしそうに写真を見つめるおばあちゃんに、私は何をきけばいいのだろう。


当時の新聞記事や、八代先生のノートでは、山岡泰蔵が美子を殺害して、その後自殺したと書いてあった。


でも、何か変だ。


そもそも、自殺するくらいなら、美子のカラダをバラバラにする必要なんてないはず。